VOL.20 学校へ行こう① ~「働き方改革」~
#学校教育はなぜ変わらないのか#
AIだ、ITだ、VRだ、ブロックチェーンだと
世の中が急激に変化し、どんどん情報化社会が進んでいる中で、
いつまでも変わらない業界がいくつかあります。
学校もその1つです。
学校の教室では今も、
教師が大勢の子どもの前に立ち教えるという一斉授業
というスタイルがスタンダードで、
黒板に書いたことを子ども達がノートに写し、
先生が一人一人のノートを見て回る
という光景が全国の多くの学校で行われています。
そう、このスマホが全盛の時代に、
子どもたちはキーボードではなくノートを使い、
重い教科書を何冊もランドセルにいれ登校し、
学校からの連絡は相変わらず紙で届くのです。
教員以外の外部の人間からしたら
「まだそんなことしてるの!?」
「なんでICTを活用しないの?」
と思われるかもしれません。
当然、文科省はこれまでにも、
学校のICT化を進めようとデジタル教科書の使用やPC室の整備、
タブレットの活用などを推進してきましたが、
一向に進んでいない現実があります。
それは、多くの教員にとっては現在の教育の姿が当たり前であり、
危機感をもっていないことが理由の1つに挙げられます。
世間でこれだけICT関連ニュースが報じられ、
今後IT人材が不足すると言われているのに、
疑問すら感じていない、むしろ、
「ITを利用すると教育に人間味が失われる」
と思っている教員が少なくないのです。
#先生は非常識?#
「先生の常識は世間の非常識」と冗談のようによく言われますが、
まさにこれです。
自分もかつて学校現場にいた人間なのでわかるのですが、
学校現場にいたときは、この言葉の意味がよくわかりませんでした。
実際世間とのズレをほとんど感じていなかったと思います。
でも、現場を離れた今ならわかります。
先生の常識がいかに世間からずれているか。
どうして、こんなことが起きてしまうのか、
それは、
学校の先生は忙しい からです。
ここ数年「働き方改革」が盛んに叫ばれるようになり、
教員の労働実態が話題となっているのでご存知の方もいると思います。
文部科学省が2016年度に公立校の教員を対象に実施した
「教員勤務実態調査」では、「過労死ライン」
(月80時間以上の時間外労働)を超える教員が
小学校で3割、中学校で6割ということが明らかになっています。
次々に増える教育施策への対応、大変な保護者や児童への対応など
その業務内容の過酷さと時間外労働の長さに学校現場は、
今ではすっかり「ブラックな職場」として有名になってしまいました。
#学校はブラックな職場?#
ところで、実際に学校で働いている先生方が、
どれほど「学校がブラックな職場だ」と感じていると思いますか?
自分は、実は学校の先生方の多くが
世間が騒いでいるほど
ブラックとは感じていない
のではないかと思っています
その理由は
1、初任の頃から上司が遅くまで残って仕事をしているのを見ている。
2、子どもたちのために働いているという気持ちがある。
3、学校以外の社会を知らない。
4、基本真面目な人が多いので、言われたことに疑問をもたないし
もったとしても何だかんだいってやってしまう。 など
多くの教員が
今の労働環境が当たり前
だと思っている現実があるからです。
しかも、残念なことに教員はその忙しさゆえ、
新聞を見たり、ニュースを見たりする時間を
取れない人もいるのです。
(でも、お笑いはよく見る。子どもとの話題づくりのため)
#学校の先生と一般社会#
自分も転職したての頃は、
17時に上司から「帰っていいよ」と言われても早く帰ることに、
ある種の罪悪感すら感じていました。
でも、会社を17時過ぎに出て駅についたとき、
毎日ホームに人が溢れているのを見て
「世間の多くの人たちが、17時に帰っている」
という社会の現実を実感したことで、
「学校の働き方のおかしさ」に気付けました。
転職して1番変わったこと、
それは自分の時間をもてるようになったことです。
早く帰宅することで、
子どもたちと接する時間も多くもてるようになりました。
また、子どもを寝かしつけるという家での仕事は増えましたが、
その後に自分の時間をもてるようになったのです。
その時間を利用し、
スマホでニュースを見たり、本を読んだりと
社会の動きを知ることができるようになりました。
これまでは、帰宅後も授業の準備などに追われることも
多くあり自分の時間などほとんどありませんでした。
全員が自分が学校にいたときのように
自由な時間をもっていないとは言いませんが、
多かれ少なかれプライベートでも学校の仕事に縛られ
自由な時間をあまりもてない人は大勢いると思います。
#教員の働き方は異常?#
「教員の働き方改革」を進めていくのはとても大事ですが、
最近、ニュースを見ていて思うのは、
「過酷な労働実態」「ブラックな職場」などが話題の中心にあがり、
教員の仕事や努力が否定されているような気がしてなりません。
もちろん教員の仕事はとても過酷ですし、
児童・生徒や保護者との関係に悩んで心を病んでしまう人もいます。
でも、忘れて欲しくないこと、
それは、
教員はみんな好きでやっている
ということです。
仕事も、子どもも、さらに言えば
子どものために働いている自分も大好きなんです。
「こんな授業したら、子どもは喜んでくれるだろうな」とか、
「明日は○○君にこう言ってあげよう」とか
考えるのが楽しいんです。
だからそのために、時間がかかっても、
自分の満足のためなのでそれほど苦だと感じないのです。
#ニュースを見て思うこと#
昨今の教育現場の「ブラック」扱いのおかげで、
新たな問題が生じています。
それは、教員志望の若者が減っていることです。
今年度の東京都の採用倍率は2倍を切っているとも言われ、
先生の質の低下が心配されています。
自分もそうでしたが、
以前は、多くの教員が教員を志望するときには、
子どもたちとの楽しい日々を思い描き
学校にキラキラした理想や希望をもつことができました。
でも、最近の若い人にとっては、
学校というと「ブラック」という意識が先行してしまい、
理想や希望を持つ余地がなくなっているといいます。
転職した自分が言うのも何ですが、
「教育は未来を担う子ども達を育てる」
とても素敵で、やりがいのある仕事だと思います。
昨今の風潮で、
悪いことは徹底的に叩き、否定するという報道のあり方が問題ですが、
教員の仕事の大変さだけではなく、
その素晴らしさややりがいも伝えるべきだと思います。
大変さだけが一人歩きして、
先生たちが大変な思いをしてまで
成し遂げようとしている素晴らしさを
忘れている気がしてなりません。
教員が夢をもてなくなったら、
当然子どもたちに夢を与えることなんてできません。
時間外労働の長さや過労死が増えているのは問題ですが、
それは時間だけの問題だけではないということをしっかりと分析し、
どうやったら教員の負担を軽減することができるのかを
考えて欲しいと思います。
その上でしっかりと対策を練って実行して欲しいと思います。
まあ、せっかくの対策もなかなか浸透しない、
これもまた学校の難しい問題なんですが・・・。
次回は、教育の改革について書きたいと思います。